自己紹介をお願いします。
手作り腕時計ブランドARKRAFTの新木といいます。
新木さんのお仕事についてお聞かせ下さい。
東京の下町にあるアトリエで手作りの腕時計ケース、文字盤、ベルトを製作しています。
時計の職人になるのはどのぐらいでしょうか。
手作り時計の作家になるのに必要な期間は個人差があるとは思いますので明確には答えれませんが、自分の場合は師匠の工房に入らせていただいてから数か月で作品を作り始めました。ただそれ以前に手作り腕時計専門の販売員を3年ほどしています。
どのようにArkraftはスタートしましたか?
最初は師匠である篠原が代表を務めるJHAの直営店で販売員として入りました。その時期に月に数回ほど工房へ手作り時計の作り方を趣味に近い形で勉強に行っていました。
その後2009年に工房へ手作り腕時計の修理担当として入ることになり数か月後に自分のオリジナル作品も出し始めました。そして定番の作品数がまとまった数になってきた2012年に工房から独立してARKRAFTというブランドを作り東京の古くから職人の街である蔵前にアトリエ兼店舗を持ち拠点として本格的に活動を始めました。
時計のアイディアは、どこから来ていますか?
作品によって変わりますがビンテージの時計の資料は大事なアイデアソースです。他には音楽、漫画、アート作品、家具デザインなどからアイディアをいただくことが多いです。
どのよう発想をして時計のデザインに落とし込みますか?
これも作品ごとですが多いのは以前に思いついたアイディアのメモを見ながらその時の自分の好みの作風と組み合わせていくつかのパターンを作り最終的に1型の作品に仕上げます。
デザインにどのくらいかかりましたか?そして、時計の製作期間をお知らせ下さい。
思いつきでその場ですぐ作るときもありますし何か月もかけて様々なパターンを作るときもあります。時計製作期間はデザインも材料も揃っていれば2日で完成します。
時計の製作について教えて下さい。
時計の成型方法はいくつかありますが一番多く基本的な作り方は一枚の真鍮や銀の金属板を切り出し、ケースの核や文字盤の土台を作ります。その後に金属線材を加工してラグなどケースの付属部分を製作してそれぞれ作品のデザインに近づけロウ付けという技法で融合させケースの形を作ります。
ケース完成後にメーカー製のムーブメントを組み込み、針や竜頭、レンズを取り付けて時計部分は完成となります。最後に一枚革からケースに合うサイズに切り出してストラップを製作して取り付けて動作チェックを数日して完成となります。
新木さんの中で、どのくらい日本的要素を取り入れて仕事に取り組んでいますか?そして、どのように日々、日本についてのインスピレーションを取り入れていますか?
最初は海外への展開などはそれほど視野に入れていなかったため日本的要素などを深くは意識していませんでした。ただ面白いというだけで漢字の文字盤を製作していたりは1年目の作品からしていました。日本的な要素を意識するようになったのは何人かの外国のお客様と話してからでした。
現在でもどちらかというとアメリカやヨーロッパのビンテージ腕時計に憧れがあり、デザインを考える時もそれらを参考にしていたり最近は自分流で近い形を作ったりしているのですが、それと同時に日本の伝統的な技法を持つブランドとのコラボレーション作品なども積極的に展開しています。
現時点では奄美大島という島に古くから伝わる泥染めの技法で革を染め作品を作る革作家とのコラボレーションや日本甲冑を専門に作る会社のアパレル部門と甲冑部品を使った腕時計を共同作品として出しています。また他にもまだ企画段階ですが伝統工芸作品を製作している方々と話をしてオリジナル腕時計の製作を考えています。
新木さんにとって日本の伝統工芸とは?
伝統工芸といっても一言では言えないほど様々なジャンルがあります。ですが共通しているのは古くから伝わり続けるだけの魅力があるということだと思います。
その魅力的な技法を継承している人や会社と繋がり新しい世界観を生み出せればと思います。
何かArkraftのお知らせや、新木さん個人のイベントなどありますか?
*アトリエ兼ショップが観光地として有名な浅草の隣にある蔵前という駅にあります。ここは昔から鞄金具や玩具の問屋街として知られていますが近年は様々なお店がオープンしており少しずつ盛り上がってきています。ARKRAFTも日曜以外の午後は開いていることが多いので近くまで来たらぜひ寄っていただければありがたいです。
また今年は昨年まであまり出なかった手作りイベント販売などに積極的に出る予定です。
決定しているイベントはWEBページに告知するので都合が合えばぜひ来ていただければと思います。
最後に日本の工芸に興味のある海外の方に一言お願いします。
日本では最近、若い人を中心に伝統工芸を現代的なアイテムに生かす作り手が増えているように感じます。そういったアイテムから日本の伝統工芸に興味を持っていただければ幸いです。