アートをビジネスと捉える一面を見せながら、世界を向いてる現代アーティスト 大村雪乃さんにインタビューしました。 「世界各国にバズられた新しいアートを目指す現代美術家 大村雪乃」 2012年ミッドタウンアワード(Tokyo MidtownAward2012)で入選 そこからメディアで取り上げられ頭角を表す。 2010年から文房具シールで都会の夜景を再現する絵画作品を制作。立地条件の良い場所から撮影した夜景を、安っぽい文房具シールで再現する事で金銭価値における矛盾と大量消費社会の違和感を表現する。 なぜ夜景に魅力を感じ作品にしようと思ったのですか? 横浜が出身で、ランドマークが良く見える場所に住んでいたので、幼い頃から夜景が身近にあったんです。ただ美術業界では抽象的な概念から、物事を勉強していくので、夜景やお花などのわかりやすい綺麗なものは敬遠されがちになります。今更そういうことを描いたところで、どうなの?っていう風潮があって。そのため大学では、抽象度の高い作風を心がけて制作していたのですが、やはり自分の「美」と向き合う中で夜景が自分の根底にあると再認識したんです。自分が美術家になったとき、きっとこの夜景というのは自分のモチーフの中で、外せないモチーフになるだろうと思ったんです。ただその反面、夜景を普通に描いても美術業界の中では、あまり評価もされないだろうと思ったんです。そこで、どこかでこの夜景を自分らしく描きたいと思っていました。 ですが私には特別な技術がなかったのですし、画家って才能と高い技術が要求されますが、そういう世界の頂点に立っても売れるかは別の話だと思うのです。高い技術がないと美術は評価されないという風潮を覆したいと考えました。この人しか出来ない作品ではなく、誰もが作れそうな作品を作りたいと思ったのです。 誰でも出来てしまうと「オリジナリティ」の弱さに繋がらないのですか?Originality 芸術の世界ではアイデアを誰よりも初めに形にして発表すれば、その時点で著作権が発生するので、真似されたところで評価はされません。重要なのはアイデアを発表し続けることだと思っています。私は特別な技術があるわけでもないので、誰もができそうな技術でアイデアを発表することで、もっと芸術を身近な存在にしたいし、みんなが私たちも作れるかもと思わせることが面白いと思っています。 その中でシールってとても身近ですよね。子供からご老人まで、誰でもシールを貼るだけで絵ができるって意外ですし、できる気がすると思わすことができるんです。それだけ身近に感じてもらえるのが、面白いと思います。 作品は夜景だけですが、別なテーマを作る予定は? 夜景だけということが一番重要だと思っています。このようなモザイク手法は既にいくつかあるんです。私が夜景にこだわるのは、夜景という一つの光がシールに置き換わることで、驚きがより発揮されることだと思っています。これが例えば人物をモチーフに行った場合、ただのモザイク画になってしまい、技術的なところだけにフォーカスされてしまいます。 また、夜景にはゴージャスやリッチなイメージを持たられる方がいらっしゃると思うのですが、シールという安価な素材で表現できることで、人々が思う「夜景」に対するイメージの問いかけをしているのです。夜景の美しさとは何か?という問いかけです。 現代アートって難しいイメージがあるかもしれませんが、コンセプトや私が発言するメッセージ性を読み取る世界なのです。よく制作期間や技術的部分を注目してしまいがちですが、作品を通して美しさとはなど、物を考えるきっかけになってほしいと思っています。 次に挑戦したい夜景などはありますか? 日本をベースにしているので、その土地柄がでるような大衆的なロケーションを選んでいます。誰もが知っている夜景でなければ、共感を得ることは難しいと思うので、やってみたいのは新宿や上海などの繁華街に興味があります。 制作工程を教えてください。 制作工程は、まずベースとなる写真を選び、それをフォトショップに読み込み、それを元に、あらかじめ市販されているシールと同じ原寸大のシールスタンプを用意して、一つずつフォトショップ内で貼っていきます。フォトショップ内で完成したら、実際のキャンバスで市販される丸シールで再現します。 国内でアートの発表の場はある? 全然ないです。まずギャラリーがサポートしてくれないですし、アートに関するマネージメントが確立されていないのが現状です。また国がアートに対して積極的ではないです。そして日本では作品は美術館で見るものという固定観念があります。また、日本の居住空間も狭く、美術品を飾るスペースがないので 美術を買うという習慣がないのです。美術品は富裕層の嗜みという風潮が良くないと思っています。誰でも買えるものであって欲しいのです。 大村さんの作品も買えるのですか? はい、もちろんです。基本的には値段設定は所属ギャラリーによって決まりますが、私の作品は若手作家の部類なので、値段も手頃だと思います。 どんな基準で値段は決まるのですか? 値段はコンセプトの良さ、サイズと時間、作家の活動期間、知名度、市場価値などを考慮して決まっていきます。 日本のアート市場は狭いとおっしゃっていましたが、世界へ売り出していく予定はありますか? 現在、香港にある不動産会社Swirepropertiesから作品の依頼がありました。そのクライアントはアイランドイーストというオフィス街にビルを持っていて、その周辺にアートツリーというギャラリーができるそうで、そこでも出展できればと思っています。いま香港は現代アート市場では、非常に大きい市場として注目されています。 海外はアート作品を購入する習慣がしっかり根付いているので、まずアート作品を気に入ったら、買えるか買えないかで判断するそうです。日本にはその文化はまだないので、世界のアートフェアなどに積極的に出展して海外へのチャンスをつかみたいと思っています。 日本市場が狭いのは、なぜだと考えていますか? 日本のアートに対する政策に問題があると感じます。海外の現代アート市場と日本のアートは断絶しており、日本は孤立状態だと思います。海外と日本で決定的な違いは、現代アートを資産運用として捉えられるかどうかなんです。日本は固定資産税が絵画も対象になっており、持ちたがらない傾向にあります。 しかし海外はそれが可能。ビジネスとしての現代アート市場がしっかりとあるのに、日本にはない。その危機感を常に意識しています。 だからこそ、海外とのやりとりを積極的に行いたいです。 つまり、いまどの国に自分の作品のニーズがあるかリサーチしながら、発表の場を模索しています。将来的にはクリスティーズというオークションの場に出店できたらと考えています。2大オークション会社の一つなので、そこで知名度を高めていきたいと思っています。 大村さんの目指す将来は? しっかりと市場を見据えてビジネスとして、アート作品を発表していきたいです。アート業界のマネージメントの勉強もしながら、自分の位置を確立していけたらと思っています。現代アートは純粋なアートだけでは成立しない、マネーゲームの要素もあると考えています。一番有名なのは、やっぱり村上隆さんが代表例で、村上隆さんの作品の芸術性だけで評価されているわけではなくて、そこにはマネージメントが絡んでいて市場を捉えているから、10数億円の値段で彼の作品がやりとりされていると思います。 だからこそ、世界に直接やりとりができるよう活動していきたいと思っています。 ご協力ありがとうございました!